冷所保存の薬剤

薬局でお渡しする薬剤には「冷所に保管してください」との注意が付されていることがあります。そのような薬はいくつかあるのですが具体的な薬剤の種類としては、坐薬、注射薬、点眼薬などです。これらの薬は外出先に持ち歩くことも多くあり、患者さんから「何分以内なら常温でも大丈夫ですか?」といった感じの質問をいただくことがまれにあります。今回は、冷所保存の薬を常温に保管した場合に、大丈夫だと考えられるだいたいの時間の目安をお伝えしようと思います。

当薬局の冷所保存薬剤の例です。上からノボラピッド30ミックス注、インテバン坐剤です。
写真では見にくいですが冷所保存の表記があります

結論から言いますとその目安とは、『かなりの高温にならなければ、数日程度冷蔵庫から取り出していてもほとんど問題なし』です。そもそも薬は体に入ってから数時間かけて作用を発揮するので、基本的に体温程度の温度では全く問題ないのです(一部の例外はありますが、そのようなお薬をお渡しする場合にはきちんと説明いたします)。ここでいう、”かなりの高温”とは真夏の車内の温度のような50度以上になるような環境のことですので、そのような場所に置きっぱなしにしなければ大丈夫ということです。具体的には暑い日の停車中の車の中などです。

多くの注射薬はタンパク質が主の薬剤なので、高温になると変性してしまいます。これは卵に火を通すと透明→白色になることと同じです。ですので、注射薬の様子が透明→濁りなど見た目が変わっている場合は使用しないでください。

また、冷所保存の坐薬は体内で液体となるような物資に薬剤成分が混ぜてありますので、高温になるとどろどろになって元の形が保てなくなります。ちょうどチョコレートやバターのような感じです。一度そのような状態になった薬剤は、もう一度固形化しても元通りの均一な状態には戻らないので使用しないでください。

このように高温には弱いとはいえ、意外にも常に冷所に保管していなくても薬の成分としては問題ないのです。ではなぜ、あえて「冷所に保存」になっているかというと、”冷所に保管し続ければ〇〇年〇〇月までもつ”という消費期限があるからです。つまり、冷所保存の薬を常温に保存している場合では表記してある期限は保証しませんよ、ということです。ですから、使用する機会がしばらく先になる薬の場合などはやはり冷蔵庫で保管してください。

その他、薬の保管や薬の様子が変化してしまった場合などについてのご相談も、いつでもお受けいたしますのでご気軽にお問い合わせください。

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